vol.1 単なる図表作成で終わらない分析のために
はじめに
本コラムでは、特許分析の実務で発生する様々な課題への取り組み方など、現場でつちかってきた分析ノウハウを発信してまいります。
着手前に持っておきたい「半歩先」の考え方
特許情報分析では、件数集計やパテントマップの作成までは進められても、その先で止まってしまうことが少なくありません。図表はそろっている。競合との違いも一通り見えている。
それでも、「で、何が言えるのか」「次に何を考えるべきか」で議論が止まる。これは、実務の現場でよく起きることです。
このシリーズでは、分析結果を示唆・仮説・提案につなげたい実務担当者に向けて、そのための考え方を紹介していきます。

「半歩先」という考え方
出発点になるのが、「半歩先」です。分析に着手するとき、何を集計するか、どの切り口で比較するかを考えます。それは自然なことです。
ただ、差が出るのは、その一歩手前です。どこまで考えてから着手するかで、その後の進み方は変わってきます。
ここで言う「半歩先」とは、自分なりに考えたところで止まらず、そこで、もう少し先まで考えてみることです。依頼された内容そのものだけでなく、その先の活用や、分析自体を一段高めるために何を考えておくべきかを、少し先回りして意識すること、とも言えます。
場面で考えると、こうなる
たとえば、競合との技術領域別マップを作る場面。そのまま着手すれば、どの領域にどれだけ出願しているかは整理できます。
ただ、着手前に少し立ち止まって「半歩先」を考えると、問いの持ち方が変わってきます。
- 依頼者はこの図で何を見たいのか。
- 自社が手薄な領域を確認したいのか。
- それとも、競合の注力領域を把握して次の検討材料にしたいのか。
- 最近の出願に絞ると、見え方は変わらないのか。
同じマップでも、「違いを示す図」で終わるか、「次の議論につながる図」になるかは、ここで分かれます。
習慣が変えるもの
以前、私は分析担当のメンバーに、「自分が考えたところから、もう半歩だけ先を考えてから着手してほしい」と繰り返し伝えていました。細かい進め方を最初から教えたわけではありません。変化は、小さなところから出てきました。
依頼者への報告の場で、「追加で、分析して欲しい」と言われる場面が、少しずつ減っていきました。
つまり、着手前に半歩考えることで、依頼者が次に必要としそうなことがだんだんわかるようになっていったと言えます。
自分が考えた先に、もう半歩進める
同じマップでも、「違いを示す図」で終わるか、「次の議論につながる図」になるかは、着手前のこの半歩で分かれます。次の分析から、自分が考えたところで止まらず、そこからもう半歩だけを意識してみてください。
その半歩が、図表を「作ったもの」で終わらせず、「次の議論につながるもの」に変えていきます。
▶次回は
半歩先を意識しないまま始めた分析が、なぜ途中で止まりやすいのかを、具体的な場面に沿って整理します。