特許分析コラム

2026-07-01
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件数の解釈

件数が多いことは、何を意味するのか

件数が多い領域は、重要に見えやすい

前回は、特許情報分析における「観察」と「分析」の違いについて考えました。
パテントマップや集計表を開いたとき、まず目に入るのは件数の多い領域です。
  • 「A領域が最も多い」
  • 「競合各社もこの領域に集中して出願している」
こうした結果を見ると、「A領域は重要な領域ではないか」と考えたくなります。報告を受ける側も、件数の多い領域には自然と注目しやすくなります。

もちろん、その解釈が正しい場合もあります。
ただし、件数が多いという事実だけで、すぐに重要領域と判断できるわけではありません。
大切なのは、件数の多さをそのまま結論にせず、「なぜ多いのか」を一度立ち止まって考えることです。

「多い」には、いくつかの理由がある

たとえば、自社の開発テーマ周辺について特許母集団を作成し、競合を含めた技術領域別の件数マップを見ている場面を考えてみます。
そのマップでA領域の件数が最も多かったとします。
このとき、「A領域は重要領域ではないか」と考えるのは自然な反応です。
しかし、A領域の件数が多い理由は一つとは限りません。

同じ「件数が多い」という結果であっても、その背景にはいくつかの異なる可能性があります。

「なぜ多いのか」を3つの視点で考える

件数が多く見える理由を、技術・市場、出願行動、分析条件に分けて考えてみます。
視点 多く見える背景 確認したいこと(例)
技術・市場の関心 技術課題として関心が集まっている。
市場の広がりや研究開発の活発化が背景にある。
直近でも増えているか。
複数企業が継続的に出願しているか。
企業の出願行動 分割出願が多い。細かな改良まで出願している。
一部企業が件数を押し上げている。
企業別の内訳に偏りがないか。
特定企業だけの動きではないか。
分類・分析条件の影響 分類の定義が広い。周辺技術やノイズが含まれている。
対象期間が長く、過去の出願が積み上がっている。
分類のくくりが大きすぎないか。
検索条件や対象期間の影響はないか。
この3つを理解しておくことで、「件数が多い」という事実の受け取り方が変わります。
たとえば、複数の企業が継続して出願している場合、それは技術課題への関心が業界全体に広がっているサインかもしれません。

一方で、一社だけが件数を押し上げているのであれば、その企業固有の出願戦略や重点領域の影響を見ていく必要があります。
また、分類の切り方そのものが広すぎる場合には、そもそも比較単位を見直す必要があるかもしれません。

このように、「件数が多い」という事実は、それ単体で意味が決まるものではありません。
「なぜ多いのか」を確認してはじめて、次の判断につながる情報として読み取れるようになります。

件数が多いときに、まず確認したいこと

件数の多い領域を見つけたとき、すぐに「重要領域」と判断する前に、次の一文を置いてみてください。
「この件数の多さは、技術・市場の関心によるものか、企業の出願行動によるものか、それとも分析条件の影響か。」
数字を結論にしてしまう前に、その数字が「なぜそう見えているのか」を一度立ち止まって考えることが重要です。
そのうえで、
  • 直近の増減の傾向
  • 企業別の偏り
  • 分類や検索条件の影響
といった点を確認していきます。
この順番を意識することで、件数は単なる大小比較ではなく、「次に何を確認すべきか」を考えるための手がかりになります。

件数を読むということは、単に数字の大小を見ることではありません。
その数字がどのような背景で生じているのかを確かめ、次の判断につながる情報として解釈することでもあります。

▶次回は

今回は、ある時点の件数をどう読むかを考えました。
次回は、件数の「増減」をどう読むかを取り上げます。
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プロフィール

葉山 英樹

特許分析コンサルタント。 特許分析の専門家として企業の知財戦略を支援。
日東電工株式会社にて技術開発・経営企画に従事し、 特許情報分析を活用した新テーマ創出支援を推進。 その後、ワイズ特許サービスにて パテントマップ分析・競合分析支援を実施。 現在は株式会社ケミストリーキューブにて 調査分析コンサルティングおよび人材育成支援を行っている。 本コラムでは、特許分析のノウハウや 分析に関する最新情報を発信しています。

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