第3回 生成AIは「何ができるか」から考えない
自分たちが「何を変えたいか」から、使いどころを考える
生成AIの活用を考えるとき、
- 「特許調査では何ができますか」
- 「分類にも使えますか」
- 「パテントマップの分析もできますか」
と、まず生成AIにできることを調べることがあります。
活用事例を知ることは、生成AIを理解するうえで役立ちます。しかし、できることをいくつ知っても、
「では、自分たちはどこから使えばよいのだろう」
となると、なかなか決められないことがあります。
ここで少し視点を変えてみます。
「生成AIで何ができるか」ではなく、「自分たちの仕事をどう変えたいか」から考える。
生成AIの使いどころを考える一つの方法です。
まず、今起きている「問題」を見る
同じ特許情報分析でも、起きている問題は同じとは限りません。 たとえば、
- 「検索や母集団作成に時間がかかる」
- 「分類作業の負荷が大きい」
- 「分析結果が件数の説明で止まりやすい」
- 「報告資料の作成に時間を取られる」
といったことがあります。
ここでは、あるべき姿と現状との差を「問題」、その問題を解消するために取り組むことを「課題」として考えます。
たとえば、「分類作業に時間がかかっている」は問題です。そこから、「分類作業を効率化し、分析に使える時間を増やす」と決めれば、取り組む課題が見えてきます。
自社、部門、担当者のどこから見るかによっても、問題や課題は変わります。
本来は「あるべき姿」から考える
ただし、本来は現在の問題だけから考えるのではありません。
自社や部門として、今後どのような役割を担いたいのか。特許情報分析によって、どのような価値を提供したいのか。
そうしたあるべき姿と現状とのギャップから、問題と課題を考えることが出発点です。
一方、生成AIの導入初期では、まず現在の業務を見渡し、どこに問題や改善余地があるのかを捉えることも、具体的な活用を考える入口になります。
分析業務全体をプロセスで見る
そこで役立つのが、特許情報分析をいくつかの工程に分けて見ることです。 たとえば、
課題・目的確認 → 分析設計 → 検索・母集団形成 → 公報確認・情報抽出 → 分類 → 集計・可視化 → 傾向・差異の読み取り → 解釈・仮説形成 → 報告・提案
という流れです。
これは、特許情報調査分析を考える際の9つのプロセスです。
AI活用を考える前に、目的確認から報告・提案まで全体を見て、どの工程に問題や改善余地があるのかを捉えます。
重要なのは、AIが使えそうな工程を探すためだけに分けるのではないことです。
まず問題のある工程を見つけ、取り組む課題を決める。
そのうえで、生成AIをどこで使うと効果があるかを考えます。
「使えるところ」と「使うべきところ」は違う
生成AIは、検索語候補の作成、情報抽出、分類、結果の読み取り、仮説形成、文章作成など、多くの工程で支援できます。
9つのプロセスをさらに小さなタスクに分ければ、AIを使える場面はさらに増えます。
しかし、「AIが使えるところ」が、そのまま「AIを使うべきところ」とは限りません。
たとえば、分類をAIで効率化できても、問題が「分析結果の意味づけが浅い」ことなら、分類時間を短くするだけでは成果は大きく変わらないかもしれません。
反対に、分類作業に時間を取られ、分析に十分な時間を使えないことが問題なら、分類支援は有効な選択肢になります。
一部の工程だけを改善しても、分析全体の成果につながらないことがあります。だからこそ、全体を見たうえで問題・課題とAI活用箇所を結びつけることが重要です。
「何ができるか」より、「何を変えたいか」
生成AIの機能を知ることは、活用の入口です。
その先では、
「自分たちの仕事を、どう変えたいのか」
を考えてみてください。
あるべき姿と現状との差を見て、問題を捉え、取り組む課題を決める。その課題がどのプロセスに関係するのかを見ると、生成AIをどこで、何のために使うのかが見えやすくなります。
▶ 次回は
生成AIを使う工程が見えても、その工程をすべてAIに任せればよいわけではありません。
次回は、AIに任せることと、人が担うことをどのように分けるかを考えます。
