「半歩先」とは何を考えることなのか
これまでのコラムでは、特許情報分析を図表で終わらせず、次の議論につなげるために「半歩先」を考えることを取り上げてきました。
- 着手前に、依頼内容の少し先まで考える。
- マップを作る前に、探す順番を考える。
- マップを見た後に、結果の使い道を考える。
いずれも共通しているのは、作業そのものでなく、その先に何が必要になるのかをあらかじめ少しだけ見ておくという点です。
今回は、そのまとめとして、「半歩先」とはそもそも何を、どのように考えることなのかを整理します。
ヒアリングシートを埋めても、分析が止まることがある
特許情報分析を始める前には、対象技術、対象企業、調査範囲、納期、必要なアウトプットなどを確認します。これらをヒアリングシートで整理することは重要です。
しかし、項目がすべて埋まっていても、そのまま分析が次の議論につながるとは限りません。
たとえば、目的欄に「新規テーマ探索の参考にしたい」と書かれていても、実際の分析では次のような迷いが生じることがあります。
- 「どの領域を候補として見ればよいのか」
- 「この結果は、誰が何を判断するために使うのか」
ヒアリングシートはあくまで入口の整理です。
しかし、項目を埋めることと、依頼者が分析を必要としている背景や、その結果をどう使うのかまで捉えることは、同じではありません。
半歩先は、背景と使い道をつなげて考えること
半歩先とは、特定のフレームワークを埋めることでもなく、最初から高度な仮説を立てることでもありません。
- 依頼者が、なぜ今この分析を必要としているのか。
- どのような議論の途中にいるのか。
- 今回の結果を、誰が、何の判断に使うのか
こうした背景と使い道を、分析に入る前に少しだけつなげて考えることです。
もちろん、最初からすべてを把握できるわけではありません。依頼者自身も、必要な情報を明確に言語化できていない場合もあります。
だからこそ、分析担当者側には、
- 「この依頼の背景には、どんな迷いがあるのか」
- 「この結果を見たら、次に何を知りたくなるのか」
といった視点を、少し想像することが求められます。
この「つなげて考える姿勢」こそが、半歩先の本質です。
半歩先は、各フェーズで使う考え方
半歩先は、分析の最初だけに使う考え方ではありません。
- 検索式を作る前なら、母集団をどの比較や確認につなげるのか。
- マップを作る前なら、その図をどの領域選定や深掘りにつなげるのか。
- 結果を読む前なら、見えた増減や差をどの議論につなげるのか。
このように、各フェーズで「この作業の次に何が必要になるのか」を少し意識することで、作業はばらばらではなく、次の議論につながる流れになっていきます。
半歩先は、振り返りと問いで育てられる
半歩先は、最初から自然にできるものではありません。
ただし、意識的に育てていくことは可能です。
一つは、報告後の振り返りです。
- 報告の場でどのような質問が出たのか。
- どこで追加分析が必要になったのか。
- どの図表で議論が止まったのか。
こうした点を振り返ることで、次回の分析前に考えておくべき視点が見えてきます。
たとえば、毎回「この領域の中身は何か」と問われるのであれば、次回はマップ作成前に領域の深掘り前提を整理しておく必要があります。また、「自社との差は何を意味するのか」と問われるのであれば、比較結果をどう解釈するかを事前に想定しておくべきです。
もう一つは、問いを広げることです。
まず自分で問いを立て、そのうえで分析目的や依頼背景、使い道を整理して生成AIに渡すことで、自分だけでは気づきにくい視点を得ることができます。
AIや分析ツールによって、集計や可視化は今後さらに高速化していきます。
だからこそ分析担当者には、「この分析は、次の何につながるのか」を考える力が、より求められます。

次回は
今後は、具体的な分析のコツや考え方に進めていきます。
次回は、増減や件数差を断定せず、仮説として扱うための考え方を紹介します。