特許分析コラム

2026-05-21
なぜ「とりあえず分析」は途中で止まりやすいのか | 特許分析コラム

vol.2 なぜ「とりあえず分析」は途中で止まりやすいのか

新テーマ創出支援の分析で、実際に起きたこと

前回は、特許情報分析を図表で終わらせず、次の議論につなげるために、着手前に「半歩先」を考えておくことを取り上げました。

では、その半歩先を意識しないまま分析を始めると、どこで止まりやすくなるのでしょうか。
過去の経験をご案内させていただきます。

約2000件の特許を分類し、パテントマップも作成したものの、この先どうすればよいかわからない」

背景には、主力事業の伸び悩みがありました。
知財部門として、特許情報を使って何か新しいテーマを提案したい。
その思いで、分析は丁寧に進められていました。
  • 分類もしている。
  • マップも作っている。
  • 自社と他社の違いも、ある程度は見えている。
それでも最後に、
「どこから見ればよいのか」
「どの領域を次に確認すればよいのか」
「何を手がかりにテーマ候補を探せばよいのか」
で止まってしまっていました。

これは、分析量が足りなかったという話ではありません。
問題は、マップを見た後に、どのような順番でテーマ候補を探すのか。
その「探し方」を、分析前に十分考えられていなかったのです。

マップを増やしても、自然に見えてくるとは限らない

新しいテーマを探す分析では、いろいろな切り口が考えられます。

技術分類別に見る。
出願人別に見る。
時系列で見る。
自社と競合を比較する。

どれも必要になり得る見方です。
しかし、切り口を増やせば、テーマ候補が自然に見えてくるとは限りません。
むしろ、マップが増えるほど、

「どの図から見ればよいのか」
「どの違いに注目すればよいのか」
「次に深掘りする領域はどこなのか」
が見えにくくなることがあります。

ここで起きているのは、マップの作り方の問題ではありません。
問題点は、テーマ候補の探し方を考えないまま、途中の作業であるマップ作成に入ってしまったことです。

今回の半歩先は「探し方を考えておく」こと

今回の半歩先は、「探し方を考えておく」ことです。

探し方を考えておくとは、最初から有望テーマを決めることではありません。
どの順番で見れば、テーマ候補に近づけそうかを仮置きしておくことです。

たとえば、まず自社と他社で違いが大きい領域を見る。
次に、近年出願が増えている領域を見る。
さらに、自社の既存技術とつながりそうな周辺領域を見る。

このように、探す順番を置くだけでも、どのマップを作るか、どこから見るかは変わります。
同じマップでも、探し方を考えないまま見ると、単なる一覧になりやすいです。
一方で、探し方を考えておくと、マップはテーマ候補に近づくための材料になります。

まずは「探す順番」を一文で書く

探し方を考えるといっても、最初から精密な分析手順を作る必要はありません。
まずは、マップを作る前に、
「今回は、どの順番でテーマ候補を探してみるのか」
を一文で書いてみることです。
たとえば、
「今回は、自社出願が少なく、競合出願が増えており、既存技術との接点がありそうな領域からテーマ候補を探してみる」
という程度で構いません。

この一文があるだけで、どの母集団を使うか、どの切り口で見るか、どのマップを優先するかが考えやすくなります。
次の分析では、マップを作る前に、まず「探す順番」を一文で置いてみてください。
その一文があることで、図表は「作ったもの」で終わりにくくなり、「次のテーマを探す材料」として使いやすくなります。

▶次回は

マップや件数を見たあとに、「多い」「少ない」「増えている」で止まらないための考え方について紹介します。

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プロフィール

葉山 英樹

特許分析コンサルタント。 特許分析の専門家として企業の知財戦略を支援。
日東電工株式会社にて技術開発・経営企画に従事し、 特許情報分析を活用した新テーマ創出支援を推進。 その後、ワイズ特許サービスにて パテントマップ分析・競合分析支援を実施。 現在は株式会社ケミストリーキューブにて 調査分析コンサルティングおよび人材育成支援を行っている。 本コラムでは、特許分析のノウハウや 分析に関する最新情報を発信しています。

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